研究概要 |
本年度は,実験用データベースとして画像データベースを作成し,マルチメディア情報の大きな特徴である多次元性とデータ分布特性について解析を行った.特に,画像データに対する類似検索を取り上げ,多次元性やデータ分布特性を加味することによって,処理の効率化が可能であることを明らかにした.高次元空間における最近接点探索は,マルチメディア情報の類似検索手法として広く使われているが,最近の研究成果から,高次元空間では,低次元空間では想像できないような興味深い現象が起こることが明らかになっている.高次元空間の自由度があまりにも高いために点が散在してしまい,点相互の距離に有意な差が生じないことが起こり得るのである.最近接点と他の点との差が小さい場合,検索結果がユーザにとって意味の小さいものになる上,最近接点探索の処理効率も低下する.そこで,本研究では,局所的な埋め込み次元数に基づいて,最近接点の示差性を評価する新しい最近接点探索法,「示差性感応型最近接点探索(distinctiveness-sensitive nearest neighbor search)」を考案した.この探索法は,最近接点の示差性を評価できるだけでなく,従来の最近接点探索法に比べて,探索コストの低減も可能にする.この手法の有効性を検証するために,本研究では,画像検索を対象として評価実験を行った.実験データとしては、市販の写真画像60,195枚を使用した.その結果,最近接点の示差性は,検索結果の有意性と密接な関係を持っており,最近接点の有意性が高いほど検索結果としての有意性も高く,最近接点の有意性を調べることによって検索結果がどれほどの有意さで類似しているのかを評価できることが明らかになった.このような類似性の評価法は,特に,人間への検索結果の呈示を伴う対話的な検索システムにおいて有効であると考えられる.
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