本研究は、WWW上の情報検索過程を通じ、ユーザが対象分野の概念体系を獲得する過程を、検索文書間の関係、話題分布の提示により支援するシステムの構築を目的とする。検索された文書集合をバランスよくカバーするようなクエリー集団を自動生成し、ネットワーク化してユーザに提示することにより、検索対象領域を構成する話題、検索に有効なキーワードなどを知ることができる。同時に、柔軟性、多様性を兼ね備えたネットワーク構造の自己組織化手法として、免疫ネットワークモデルを新たに採用することも本研究の重要な目的である。免疫システムの工学的応用は近年注目を集めているものの、その機構が十分に利用されているとは言い難い。本研究で提案する、免疫ネットワークモデルを用いた自己組織化アルゴリズムを、生体機構の工学的応用における新たなパラダイムとすることも視野に入れて研究を行う。 初年度に当たる今年度は、免疫ネットワークモデルが持つ様々な特徴のうち、(1)多様性の維持、(2)記憶の保持、(3)漸進的自己組織化、の三点が、ユーザの検索履歴に基づいて文書間の関係をとらえ、話題分布構造を抽出する上で重要であることを示し、免疫ネットワークに関して数理生物学の分野で提案されている数理モデルを分析し、これらの特徴を工学モデルとして実現可能であることを示した。具体的には、キーワードを抗体、文書を抗原としてとらえ、各要素間の接続関係をキーワードの共有度に基づいて設定し、免疫ネットワークモデルを用いて活性度の計算を行った結果、文書集合の大部分を均等かつ排他的に覆うキーワード集合が高活性化することを確認した。
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