研究概要 |
従来の漸次的な音声対話システムに,アクセト等の韻律情報を加えて,より円滑な音声対話システムの構築について検討を行った.本年度の研究実績は以下の通りである. 1)漸次的な韻律処理部の構築 韻律処理部には先行研究(信学論(A),Vol.J77-A,No.2,pp206-214,1994年2月)のアクセント句境界検出器を応用した.まず,従来のDP整合に代えて,HMM(Hidden Markov Model)を用い,尤度最大基準によって句境界を検出するようにした.また,この検出器から得られる任意の時刻までの句境界仮説を用いて,その時刻における韻律信頼度(句境界らしさ)を定量化し,時間に同期して出力するように改良した. 2)漸次的な音声認識部の構築 任意の時刻における音声認識の進行状況を漸次的にユーザにフィードバックできるような音声認識部を整備した.研究用音声認識エンジンとして,IPA(情報処理振興事業協会)の研究成果物の"julius"を利用し、これを漸次的出力型に改良した.また,音響信頼度(認識の確からしさ)を認識候補の尤度差を用いて,定量化した. 3)音声認識部と韻律処理部の統合 韻律信頼度と音響信頼度の結合関数である総合信頼度を用いて,意味的にまとまりのある時刻(文節,韻律句などの発声直後)で,かつ認識候補が確からしい場合に相槌を打つシステムを構築した. 4)音声資料の収集および評価 発声が明瞭な音声として,ATR日本語連続音声データベース・セットBを用い,また漸次的理解や相槌挿入に適した音声として,対話型の音声を新たに録音収集し,評価を行った.韻律の寄与の度合によって,相槌を打つ頻度およびタイミングが制御できる事を示した.
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