研究概要 |
現在、様々な環境下において火災報知システムが設置されている。火災報知システムは、人命や財産を守り、安全な社会生活を保証するために欠かせないシステムである。しかし現状では、火災ではないのに警報が鳴る非火災報が頻繁に起こり、システムの信頼性が低下しているために、実際の火災時に適切な行動が遅れるといった問題が指摘されている。また、管理者がシステムを停止することにより、火災の発見が遅れ、ビルの大火災を招いた事実もいくつか報告されている。センサの改良により非火災報件数は減少しつつあるものの、現在においても依然として非火災報件数の低減は大きな課題となっている。 そこで本研究として,遺伝的アルゴリズムを用いた火災判断ルールの自動獲得手法を提案した.煙濃度時系列データに対し,煙濃度データを波形としてとらえ,着炎火災・薫燻火災・煙草・水蒸気(湯気)・調理の各カテゴリに対する特徴をIF〜THEN〜形式で抽出することにより,その特徴を用いて火災判断を行った. また,予備実験として,煙濃度時系列データを用い,人間による火災判断実験を行った.火災データとして,着炎・燻焼,非火災データとして煙草・水蒸気・調理の計5カテゴリに対する時系列データを学習用・テスト用とに分け,5人の被験者に各学習用データを1つずつ見てもらい,各カテゴリに対する特徴を抽出してもらった.それぞれが得た各カテゴリの特徴を基に,テスト用データをランダムに見せ,それがどのカテゴリのものかを認識してもらい,人間による火災判断の認識率を測定した. その結果,本手法により,人間が抽出した特徴(火災判断ルール)に近いルールが自動生成されることを示すとともに,人間でも予想が困難な特徴も同時に発見されることを示した.また本手法により得られた特徴を用いて火災自動判断を行い,現行で用いられているシステムに対し高い火災判断正答率が得られることを示した.
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