研究概要 |
本研究では,様々な環境下において設置されている火災報知システムの信頼性の向上を目的として,遺伝的アルゴリズムを用いた火災判断ルールの自動獲得手法を提案してきた.煙濃度時系列データに対し,煙濃度データを波形としてとらえ,着炎火災・薫燻火災・煙草・水蒸気(湯気)・調理の各カテゴリに対する特徴をIF〜THEN〜形式で抽出することにより,その特徴を用いて火災判断を行った. 本年度には,時系列データに対する特徴を,木構造形態で自動的に抽出するシステムとして,Routing Tree(RT)を提案した.RTは,最大4つの枝を持つ木構造をしており,各枝はそれぞれ2つのFOR条件部と2つのIF条件部からなっている.ルート(根)ノードは,それぞれのFOR条件部,IF条件部に対して接続する/しない,及び判断するクラスタを持つものとする.ここでFOR条件部,IF条件部とは,時系列データの連続した情報や離散的な情報などを,その時系列データの特徴として表現する部分であり,C言語(プログラミング言語)におけるFOR文,IF文で構成されている.各条件部は,複数の選択経路とその経路を決定する分岐点が連なった形で構成され,学習により経路を獲得する事でそれぞれの表現型(抽出された特徴及びクラスタリングされるクラスタ)が得られる.本提案手法を,煙濃度時系列データからの特徴抽出に適用することにより,有効な火災自動判断システムの構築を行った. また,本研究で用いている遺伝的アルゴリズムをはじめとした進化的計算手法では,繰り返し計算により探索を行うため,所望の解を獲得するために時間を要する.そこで本研究では,進化的計算手法における染色体の実評価回数を大幅に減らし,残りの染色体の評価値を推論により求めることで全体としての評価回数を短縮する評価値推論手法を提案した.この提案手法により,評価値推論手法の精度を向上させ,評価の負荷を軽減しながらも,効率のよい探索が行えることを示した.
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