研究概要 |
本年度は標記研究課題に関して以下にあげる研究成果を得た. 本研究は,画像や言語などの複数のメディアを用いたユーザとシステムの協調的インタラクションに基づいて,そのユーザの過去の要求等を考慮した上で,抽象的かつ曖昧な要求を理解することを目的としている.このための具体的事例として,ビルや地下街などの方向感覚や上下感覚を喪失しやすい三次元構造物内を対象として,人間をナビゲーションするシステムを取り上げ,そこにおける人間-計算機間のインタラクションについて検討を加えた.まずナビゲーションの過程においてもっとも基礎的な部分である経路の提示において,ユーザとシステムのインタラクションを通じて現在位置を同定しつつ目標地点への誘導する枠組みを提案した.これによって人間は元来,環境認識能力に非常に優れている一方,システムはそれを苦手とするが,両者をインタラクティブに組み合わせることで理解のしやすいナビゲーションが実現できることを示した.またユーザの道標に関する認識の仕方を,システム側がナビゲーションにおける道標の選択に対して反映可能な仕組みを提案した.これらを通じて,環境という具体的なものへと対応付けることで,ユーザの抽象的要求の理解が可能となることが示せた. 一方で,近年移動データ通信網の爆発的な普及を背景として,移動体端末によるユーザ支援を目標とした研究に注目が集まりつつあるが,本研究においてもこの種の移動体端末上でナビゲーションを実現することにより,ユーザによる様々な抽象的要求を収集可能になると考えられた.そこで,前述のナビゲーションの枠組みをサーバー・クライアントからなるシステムへと拡張し,クライアントとして携帯電話やPDAなどの複数種類の移動体端末に対応可能なパーソン・ナビゲーションシステムを開発した.
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