研究概要 |
本年度は,多層型ニューラルネットを用いて逆問題を解くための,ネットワークインバージョンの手法を,実際の逆問題の1つである画像復元問題に適用し,計算機シミュレーションと得られた結果の評価を中心に研究を行った.ノイズやボケによって劣化した画像を元の状態に近づける画像復元の問題は重要であり,様々な方法が提案されている.画像復元の問題は画像劣化過程のモデル化により,劣化画像から原画像を逆推定する,一種の逆問題と考えることができる.本年度は,この画像復元の問題を解くためのインバージョンネットワークを構成し,シミュレーションによって画像復元の動作を確認した.なお,画像サンプルについては標準画像を使用して行った.シミュレーションでは,最初に学習およびテスト用に同一の画像を用いてネットワークの動作を確認し,続いて学習およびテストで異なる画像を用いて実際の状況で画像の復元が可能であるかどうかを調べた.その結果,本手法によって逆問題を解く形で,ニューラルネットによって画像復元が可能性を示した.なお,得られた復元画像の画質評価には,画素値レベルの空間周波数の比によって比較を行うModulation Transfer Function(MTF)による基準を用いた.本年度はまずネットワークインバージョンによる画像復元を試みたが,まだ逆問題の不良設定性に対する正則化法の導入は行っていない.来年度は逆問題の不良設定性に対する考察を画像復元に適用し,より効果的な手法の確立を行う予定である.
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