研究概要 |
本研究の目的は、衛星画像に現われる台風の雲パターンを情報学的手法によって解析し蓄積することにより、台風解析や予測など気象学的な問題の解決に有用な台風画像データベースを構築することにある。すなわち、現在おこなわれているように台風雲パターンの解析を気象専門家の目視検査に依存するのではなく、パターン認識やコンピュータビジョン等の情報学的手法の適用によって、より高速でより安定した台風解析手法を確立することを目指している。そのような技術を確立したうえでの将来的な目標は、台風に起因する災害の軽減や防止に有用な情報を検索し提供できるような技術を確立することにある。本年度は研究の初年度として、基礎データの収集および各種形態解析アルゴリズムの比較について検討した。まず研究の基礎データとして約20,000件(500GByteのデータ)に及ぶ大量の気象衛星「ひまわり」画像を収集し、このデータセットから約30,000件の台風画像を生成した。この台風画像は南北両半球の台風画像を含む独自のデータセットであり、台風の中心と台風画像の中心とを常に一致させることで、雲パターンの解析に適当な形となるよう前処理された画像コレクションである。このコレクションを用いて、本年度は以下のような個別テーマについて研究を進めた。1)台風雲パターンへの変形楕円当てはめによる日変化の解析-台風雲パターンにエネルギー関数に基づく変形楕円を当てはめ、台風に見られる積乱雲領域の大きさが1日ごとに周期的に変化することを突き止めた。2)全体論的解析による類似台風雲パターンに基づく台風予測-画素値配列などの低レベルな画像特徴量を用いた特徴空間の主成分分析により、台風の全体的なパターンを次元削減した形で簡潔に表現した上で高速な類似検索が可能であることを示したが、大気のカオス的性質により雲パターンの単純な類似度のみを用いた予測は困難であることがわかった。
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