TSPの高速な近似解法の一つである空間充填曲線法は、空間を充填する曲線として、シェルピンスキー曲線等のフラクタル曲線を用いている。この方法は非常に高速であることが知られているが、そのフラクタル曲線の扱いが非常に煩雑であり実用的ではなかった。そこで申請者は、この近似解法の高速性を維持しつつ、その曲線の扱い方を容易にする方法により空間充填曲線法の改良を行った。その具体的な方法は以下の通りである。 まず空間上の全格子点に都市を配置する。次にこの都市問題に対して、Nearest-Neighbor法を用いて近似解を求める。この近似曲線を空間充填曲線として空間充填曲線法と同様にして近似解を求める。Nearest-Neighbor法は一般的に広く用いられている手法であると同時に、非常に高速でその近似解は厳密解の経路を多く含むことが知られているので、これを空間充填曲線とすることにより、近似解の精度の向上と高速性が期待される。実際実験結果から、高速性は大幅に向上し、精度も都市数増えるにしたがい改善された。さらに小規模TSPにおけるNearest-Neighbor法による近似解を自己相似的に組み合わせて大きな空間充填曲線を作成することにより、大規模なTSPへの拡張性も示した。以上の結果は、この手法が大規模なTSPの高速な解法への応用として非常に有効であるとことを示している。 なおこの研究結果は、情報処理学会東北支部2000年度第4回研究会において発表を行った。
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