本年度に実施した研究内容は、以下の通りである。 1.江戸における都市観光の発達 1-1.庶民の遊びの分類 江戸後期に出版された歳時記、年中行事、名所図会等の風俗資料から遊びの要素を抽出し、分類整理を行った。特徴としては、第一に梅見、紅葉狩りといった風雅の遊びに代表される時間消費型の遊びが数多くみられたこと、第二に季節、時候によって遊びや空間を使い分けながら、四季それぞれにふさわしい場面を設定し、遊びを展開していったこと、第三に遊びの行われていた空間によって大きく分類されること、などが明らかになった。 1-2.遊び・にぎわい空間の抽出 各種文献より、どのような空間が遊びの場となっていたかを読み取った。まず、寺社や自然資源が核となっていくつかの遊び空間を形成しているものが多くみられ、大別して市中寺社タイプと郊外寺社タイプに分けられる。市中に立地した寺社空間の場合、寺社を核として、第三次産業が境内や門前に凝縮して発展しており、空間を巡りながら様々な遊びを一連の行動として体験できるようになっていたことが読みとれた。 平成13年度は引き続きその他の遊び・にぎわい空間の抽出を進めると共に、こうした都市内の遊び・にぎわい空間が明治以降どのように変容し、現代の都市観光へとつながっていくのか、について分析を行う。 2.地方都市にみる都市観光の発達 本年度は、近代の観光政策史を通覧し、都市観光への取り組みについて見ていった上で、別府市を対象として選定、近代の都市観光の発達について資料収集など調査を進めた。結果、観光政策と都市政策とが乖離した形であったことが判明し、温泉という魅力的な資源を有しながら、それを活かしながら観光都市として成熟していったとは言い難いことが明らかになった。
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