研究概要 |
本年度では,テレビ広告に対する認知態度分析技法の全体枠組の設定準備を含め既往の研究成果、ならびに現場でのニーズを広く調査した。広告制作に向け必要とされる視聴者の認知態度を絞り込み,この認知態度を分析するためのテレビ広告のシナリオと眼球運動解析を併用した分析技法を確立した.確立した分析法は,以下のようなものである.テレビ広告のシーンの進行、およびシーンを構成する要素が持つ情報量を、時系列に記述する。次にこの時系列記述とテレビ広告視聴時の眼球運動データとの対応に基づき、認知態度を定量化する指標、注目率とメッセージ認知率を定義する。注目率はテレビ広告に対する注意深さの度合を示し、メッセージ認知率は広告内で提示される商品情報に対する認知の度合を示す。 実在するテレビ広告を用いた視聴実験を行ない、得られ足眼球運動データに基づき被験者の認知態度を分析した。その結果、被験者のテレビ広告の視聴経験、被験者のふだんのテレビ視聴時間、および広告されている商品に対する好意度といった被験者属性による、テレビ広告認知態度に与える影響について分析することができた。さらに、シーンの切り換え頻度あるいは有名人の登場といったテレビ広告設計変数と、認知態度間の関係について分析を行なった。この結果、適切なシーンの切り替え頻度、有名人の起用法、商品情報の提示強度といった点について、効果的な広告制作のための具体的な示唆を得ることができた。 現在,提案する分析技法の適用結果に基づき,分析技法の問題点を抽出するとともに、改善や修整を行なっている.平成13年度以降,テレビ広告のシナリオのみならず,シーンの意味的構造を考慮に入れた分析技法へと拡充を図っていく予定である.
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