当初本研究では、計画策定過程における様々なステークホルダーの意見交流、情報交流について、「対面」「メーリングリスト」「電子掲示板」のそれぞれの手法での違いを計測、分析することを目的としていた。しかし実施した実験・調査の結果によると、メーリングリストでは、計画策定における合意形成を行う様な情報交流はあまり発生しなかった。そこで、本年度は電子掲示板により多くの焦点を絞り、様相に着目したプロトコル分析による、情報交流評価のためのフレームワーク作成に注力した。 評価手法としては、近年益岡隆志らを中心として進められている日本語様相の分類に着目し、計画情報、ステークホルダー相互の情報のそれぞれに関する学習の親展を計測した。 実験では、被験者を4グループに分け、グループ毎に指定したWeb上(計画情報提供の方法により、2種類用意した)で、2種類のテーマについて30分程度グループ毎に電子掲示板に書き込むことで、ディスカッションを行った。テーマはそれぞれ政策、計画に対する体系立てた議論の必要ない「余暇の過ごし方について(テーマ1)」と政策に関するテーマとして「(地域の)高齢者対策について」とした。また、自分の発言を行う際には、参照したWebページ、および他者の意見について記録することで、情報交流の流れを把握した。 実験の結果、テーマ1では被験者間相互学習の傾向が強く、計画情報に関する学習効果より相手の事実判断に対する学習効果が高かった。一方、テーマ2については相手の判断への学習が進まなかったことにより、相互学習へと移行せず、相手の判断に関する学習が行われなかったためだと考えられる。 本年度の結果として、様相という形式的な特徴に着目することにより、発話文を用いてコミュニケーションの対象と聞き手の判断に関する学習の評価を機械的な手順で行える手法を提案した。
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