この研究の対象は、公共公益施設を整備する際の合意形成である。これは、ミクロにみれば個々の施設の整備を行うか行わないかがどのように決定されるかという問題であるし、経済運営という観点からマクロにみれば、資源配分をどのように行うかという問題である。 前者の観点については、このところ、国民生活に不可欠な公共公益施設について、それを整備するための合意形成が困難である例が目立っている。その背景には、施設の規模が大きくなるほど、受益者と不利益を受ける者の範囲が食い違う程度が大きくなり、両者がともに納得する結論を得ることが困難になりやすいこと、受益及び不利益の程度や内容を客観的に示す手法が必ずしも十分ではないこと等の事情があるものと考えられる。 後者は、一つには我が国における経済活動のうち政府部門が占める比率(より端的に言えば毎年の公共事業関係費の額)の是非をめぐる議論として表れる。しかし、マクロの額は個々の施設整備に要する金額を積み上げたものなので、前者の観点からの議論が影響することは避けられない。 個々の施設の整備についても、その集計値としての予算の額についても、最終的な決定は政治的に行われる。必要性・合理性についての説明・説得が成功し、関係者の納得が得られれば施設は整備されるし、一定の金額が確保されるだろう。 こうした発想に立ち、今年度は、説明や説得に使用しうる手段について検討するとともに、整備することの是非をめぐり議論が生じた個々の施設について文献調査と現地調査を行った。
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