投票システムにおける投票者の影響力を評価する「投票力指数」としては、主にShapley-Shubik指数(以下、SS)、Banzhaf指数(Bz)、Deegan-Packel指数(DP)、Holler-Packel指数(HP)などが提案されてきたが、特に後者2指数については歴史が浅く、まだその性質は充分に解明されていない。本年度の研究ではまず、投票ゲームの概念を拡張することで、SSとDPが似たような性質を持っていること、また、BzとHPがやはり似たような性質を持っていることを指摘した。 投票力指数が満たすべき望ましい性質として多くの文献で「単調性」を挙げている。これは、票数が増えるとその投票者の影響も増えるという性質だが、残念ながらDPとHPについてはこの性質が満たされないことはよく知られている。本年度は特にこれら2つの指数を取り上げ、どのような時に単調性が満たされないのか、どこまで単調性の条件を緩めると満たされるのかを議論した。 一方、実証としては1993年以降に日本で起こった連立政権発足の際の政党の連立行動を、SS指数を拡張した概念であるcoalition valueを用いて分析した。各政党のイデオロギーや政策の違いを無視して、単に自政党の議会における影響力を最大にするように行動すると仮定すると、1993年に発足した細川政権は非常に安定した政権であったことが示された。
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