『温暖化ガス排出権市場の特性を把握・敷衍・一般化するための予備研究』 (1)排出権取引市場及び経済的インセンティブ手法の基礎的調査とその体系化 (1)環境政策としての経済的インセンティブ手法(環境税、環境補助金、デポジット制度、排出権取引)を理論面から整理した。COP3の京都会議を受けてのオランダのCOP6ではその一律基準の難しさが露呈された。この都市国家間での意見の食い違いは、環境権への各国の提示する価格付けがそれぞれ異なることを意味し、折衝の難しさよりむしろ環境権を市場化する必要性が高まったと読み替えられるとの結論を得た。 (2)「排出権取引」の基本原則1)政府のほか民間企業や仲介業者の参加を認める2)管理登録制度を国ごとに設ける 3)国別の管理制度の枠内で国内取引を認めるといった条項が果たして理論的側面からどう評価(厚生を歪めない排出権取引き市場かどうかの評価)されるかを検討した。 (3)現実に実行に移されている環境税がヨーロッパを例にどのような問題点を持つかの調査。 ヨーロッパのなかでは比較的一方向的に環境負荷を外部から受ける国=スペインが環境権に関してどのように考えているのか、つまり、比較的『環境加害国と考えられていない国』がどのように環境権、排出権をとらえているのか。まさにその点が経済的手法(環境市場創設による外部性の内部化政策)の問題を浮き彫りにするであろう、との視点から現地調査を行った。アリカンテ大学生物環境学部のAntonio Esteve氏、経済学部のPaloma Taltavull女史から資料及びアドバイスを頂いた。その実態に関する分析は次年度6月に同大学の第八回ヨーロッパ不動産学会の都市環境のセッションで日本との比較研究として発表する予定。 (2)異時点間の国際貿易モデル及び都市空間モデル関連文献サーベイ 次年度に向け、国際間の排出権取引モデルを構築する基礎となる論文、その他、異時点間の一般均衡(不均衡)モデルで参考になる文献をサーベイした。特に、中央法規『世界の資源と環境1998-99』により世界の環境資源の偏在の現状とそれをモデル化する場合の留意点のサーベイに力点を置いた。
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