本研究では気象災害予知を目的としたライダーを作製中であり、本年度は主に装置の製作を行った。 光学系に関しては、本研究で開発中の光サーキュレータを応用したインライン型ライダーでは反射望遠鏡の副鏡が送信レーザビームを遮る問題点があった。今年度はアキシコンプリズムを2つ使った光学系を込み込み出射ビームを環状にすることでその解決をはかった。光サーキュレータに加えて特殊プリズムを利用したこのライダーは出射効率を向上しており、送信レーザビームとエコー光とを自動的に分離するだけでなく、エコー光に対しても偏光成分に応じてp、s両偏光成分を別々に受光することができる。これにより雲内部で生じるデポラリゼーション効果(偏光成分の消散)を計測することが可能となる。現在、望遠鏡を含む光学系の最終的な調整を行っている。 また、信号処理に関しては、雲内部からの微弱な信号を解析するため、LogAmpを使うこととした。開発したLogAmpは80dBのダイナミックレンジと30MHzの遮断周波数をもつものである。増幅されたエコー信号は14bit高速A/Dコンバータを通りDSPへと送られる。DSPは単にデータを蓄積するだけでなく、加減算、積分・微分処理等の演算をリアルタイムで行う。本研究では計測状況やその対象に応じて、プログラムを任意に変更できる形を取る。先の光学系によりエコー光のp、s各偏光成分を個別に処理するため、信号処理系は2チャンネル用意している。現在DSPでの解析を実際のライダー信号で行うべく開発を進めている。 ライダーシステムの全体的な開発を終え次第、観測データの3次元表示や時間変化・空間変化の追尾、含水量等の二次的な情報の導出を目指す予定でいる。
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