ダイポール磁場方式の核融合プラズマ閉じ込め装置に用いられる超伝導磁気浮上コイルの安定な浮上制御を実現することが本研究の目的である。外部補助コイルを用いた動的な制御に加えて、高温超伝導バルク材を用いて自己安定化を図る方式について研究を進めている。今年度は手始めとして、高温超伝導線材を用いて小型(半径43mm)の磁気浮上コイルを実際に製作し、浮上実験を開始した。浮上コイルの巻線には、ステンレス箔によって補強されたBi-2223テープ線材を約15m使用し、FRP製ボビンの上にダブルパンケーキ状に合計44ターンの巻線を行った。完成したコイル本体にはさらに発泡スチロール製の断熱層を設け、この中に液体窒素を満たすことによって冷却を行った。浮上コイルの励磁には、まず励磁用常伝導コイルによって外部磁場を印加しておき、冷却によって浮上コイルが超伝導状態に転移した後に励磁用コイルの電流を下げ、電磁誘導によって浮上コイルに電流を転流させる方式を採用した。ホール素子を用いて浮上コイルの作る磁場を測定した結果、最大350ガウス程度の中心磁場が発生し、これが3300秒程度の時定数で減衰していることが確認できた。減衰時定数は、高温超伝導線材両端の接続抵抗と巻線のインダクタンスによって決まる値で説明できる。次に、励磁された磁気浮上コイルを常伝導の吊り下げコイルの直下約100mmの位置にセットして実際に浮上制御を行った。これには、レーザ変位センサを用いて浮上コイルの位置を計測し、その情報によって吊り下げコイルの電流値をフィードバックするという制御方式を採用している。来年度は、浮上中に外部から擾乱を与え、補助コイルによる制御を試みるとともに、浮上コイルの上部に新たに配置する高温超伝導バルク材によって自己安定化を図ることを試み、両者の制御特性について比較を行う計画である。
|