研究概要 |
平成12年度は周辺プラズマ計測用リチウムビームプローブの立ち上げおよび計算機による周辺エルゴディック層の磁場構造解析を行った. リチウムビームプローブは20keVの高速ビームを用いて,周辺部の密度およびその揺動の計測を目的としている.本年度,システムとして完成しビームの入射が可能となり密度分布の初期データが得られた.データベースとしてはまだ不十分ではあるが,閉じこめ領域とエルゴディック層の境界である最外殻磁気面近傍で,密度勾配の変化が観測された. 計算機による周辺エルゴディック層の磁場構造解析では「エルゴディック」の"度合い"の定量化を試みた.これには「コルモゴロフ長」と呼ばれる,エルゴディック層中の磁束管の変形に関係する物理量を導入し,様々な磁場配位においてその径方向分布を調べた.エルゴディッシティの評価でコルモゴロフ長を用いる手法は,従来から定性的な議論でしばしば用いられてきた接続長によるものと比較して「定量化が可能である」点の他に,エルゴディック層中の磁気島を確実に分離・認識することが可能であるという特徴を持っている.今回の解析によって,これまで「磁気軸を外側にシフトさせると周辺部のエルゴディッシティが増加する」と言われていた点が,正確には「エルゴディッシティはさほど変化せず,エルゴディック層の空間的な領域が拡大する」と解釈した方が適当であることが分かった.さらに電子温度分布計測等,実験結果との比較から,周辺プラズマの径方向輸送がスクレープオフ層のエルゴディッシティと密接に関係していることが明らかになった.
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