本研究では、プラズマ中の高エネルギーイオンの振る舞いを調べることに主眼を置き、プラズマから荷電交換反応の結果生成する高エネルギー中性粒子の空間及びエネルギー分布を高時間分解能にて同時計測することが可能な検出器の開発を目的とした。` この検出器は、プラズマから飛来した中性水素粒子をカーボンフォイルに透過させ、その際に生成する水素イオンを利用する。粒子のエネルギー弁別には、磁場閉じ込めプラズマ実験装置の周辺に存在する漏れ磁場を使う。カーボンフォイルで生成した水素イオンをこの漏れ磁場によって偏向し、その軌道半径から運動量を求めエネルギーに換算する。粒子の空間弁別は、カーボンフォイルの前にピンホールを置き、ピンホールを通してカーボンフォイルに飛来する中性粒子の向きを弁別することによって行う。実際には、カーボンフォイルの後ろにZnS(Ag)シンチレータの板を配置し、粒子を検出した。その際には、シンチレータ発光2次元分布の鉛直方向に軌道半径の情報を、水平方向に粒子の向きの情報が現れる様な配置を求め、この発光分布から粒子の空間分布及びエネルギー分布を得た。 平成12年度においては、核融合科学研究所で稼働する大型ヘリカル装置(LHD)の下部垂直ポートに最適化した検出器の設計をおこなった。この際に、このポート周辺での漏れ磁場から予想されるシンチレータの発光分布を計算した。その結果、当初予想していた計測器の配置では計測が困難であることがわかり、その構造の変更が余儀なくされた。またシンチレータの発光パターンも当初予想していたものとは異なることがわかった。そこで、当初予定していた高速計測型の256画素のsi-PINダイオードアレイの使用をやめ、33万画素のCCDを計測素子として用いることにして、時間分解能よりも空間分解能に主眼を移し、発光パターンを詳細に調べ、軌道計算との相違を確認することに方針を転換した。 平成13年度において、前年度の設計を元に検出器の製作を行い、その設置を行った。NBIによる長時間放電において計測を行い、シンチレータの発光パターンを得た。得られた発光パターンは当初予想していたものと概ね一致し、この検出器の原理を実証した。しかしながら、得られたシンチレーション光の光量が予想よりも少ないことが判明し、充分な統計精度を持って高時間分解の計測を行う為には、何らかの方法で信号を増倍する必要があることもわかった。
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