京都大学原子炉実験所の京都大学臨界実験装置(KUCA)の固体減速架台の一つであるA架台において、熱中性子体系であるA1/8″P60EU-EU(3)炉心を構築し、制御棒挿入パターンを調整することにより、未臨界度を約1%(実効増倍率0.99)とした未臨界体系を構築した。この体系の炉心燃料中心部に、^<237>Np及び^<235>Uサンプルを封入した背中合わせ型核分裂計数管(BTB検出器)を装荷した。この状態で、KUCA付設の加速器パルス中性子源を用いて、14MeVパルス中性子(パルス幅約2μ秒)を体系に入射し、パルス入射後の^<237>Np及び^<235>U核分裂率の時間変化をマルチチャンネルアナライザを用いて測定した。その結果、^<237>Np核分裂率と^<235>U核分裂率の時間依存性の違いが測定可能であることを確認した。すなわち、^<237>Npと^<235>Uでは、核分裂率のピーク位置及び減衰に明かな差違が認められ、未臨界体系における中性子スペクトルの時間依存性を反映した結果が得られた。ただし、この実験では、マシンタイムの制約上、測定データの統計精度が不十分であり、シミュレーション結果との詳細な比較のためには、照射出力、照射時間の調整による実験精度の向上が必要であることが判明した。 このため、実験技術の確立を目的として、同じくA架台において、ポリエチレン反射体のみから構築されたポリエチレン体系を用いて、打ち込み中性子のパルス幅・周期・強度をパラメータとして同様の実験を実施した。この結果、実験条件として、およそ1桁の積算出力向上が必要であることがわかった。 これらの成果をふまえ、次年度の実験においては、実験精度の向上を図るとともに、体系の中性子スペクトル・未臨界度を変化させて、高精度・広範囲なデータの取得を目指す。
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