研究概要 |
核分裂片から放出される多数のγ線バックグラウンド中から,核異性体遷移(IT)によるγ線を選択的に検出するためのβ-γ反同時計数測定系の開発・整備を行った。この方法は,バックグラウンドの多くがβ崩壊に伴うものであるのに対し,ITはβ線と無関係に起こることを利用したものである。 今年度行った具体的な研究内容は以下の通りである: 1.本測定系の最重要部であるΔE型プラスチックシンチレーション検出器の設計・製作。 β線を検出するために,厚さ1mmのプラスチックシンチレータ(NE102)2枚を平行に配置・固定し,ここからの発光をアクリル製のライトガイドで光電子増倍管(浜松ホトニクスR329-02)に導く形状の検出器を作成した。シンチレータ間の距離を5mmにすることで,90%程度の立体角で線源を覆うことが可能な構造にした。 2.高純度ゲルマニウム検出器(既存設備)と組み合わせた反同時計数回路系の調整。 NIMモジュールを組み合わせてβ-γ反同時計数測定系を構築した。本装置の詳しい特性(反同時計数効率等)は,標準線源を用いて現在調べているところである。 3.オンライン実験用測定チェンバの設計・製作。 来年度は,上に述べた測定系を,京都大学原子炉実験所の研究用原子炉に付置されているオンライン同位体分離装置(KUR-ISOL)と組み合わせて実験を行う。すなわち,核分裂生成物中に含まれる核異性体の探索を行い,さらにその核的性質を詳しく調べる。この目的のため,β-γ反同時計数測定と同時に,内部転換電子の測定も可能な測定チェンバを設計・製作した。
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