プラスチックシンチレータとゲルマニウム検出器を組み合わせたβ-γ反同時計数装置を、京都大学原子炉実験所のオンライン同位体分離装置(ISOL)に接続し、核分光実験を行った。概要を以下に示す。 1.測定チェンバーの製作・設置。オンライン実験用に新たに製作したチェンバーをISOLに取り付け、真空漏れおよび光漏れがないことを確認した。プラスチックシンチレータを真空内に挿入できる構造にすることで、高立体角(90%/4π以上)を実現した。 2.測定系の性能評価。^<235>Uの核分裂片から質量分離した^<93>Yを用いて、反同時計数測定系の効率を測定した。核異性体遷移に対する効率は90%、これ以外の遷移に対する効率は40%程度であることが分かり、両者の弁別が十分可能であることを立証した。ただし、この効率はβ線エネルギーおよびβ崩壊の遷移パターンに依存し、それぞれ70-90%、30-60%の間で変動することが明らかになった。 3.崩壊データ欠損領域を対象としたオンライン実験。質量数A=145-153の中性子過剰核を質量分離し、反同時計数測定を行った。対象とする核異性体の半減期が不明のため、各質量数に対して2種類の測定モードで計測を行った。これまで実験データがほとんど報告されていなかった^<151>Ceについて、崩壊データを得ることができた。この成果は、つくばで行われた国際会議で発表した。これ以外の核種についても、詳細なデータ解析を現在行っている。なお、核異性体遷移の候補と考えられるγ線に対しては、来年度以降、Si(Li)検出器と組み合わせた反同時計数装置による内部転換電子測定を行い、その性質(多重極度、スピン・パリティ)を明らかにしていく予定である。
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