ミズナラ・イタヤ類をはじめとする樹木から成る北海道大学苫小牧演習林にて夏期に、係留式の気球を用いてステレオ写真撮影を行った。林床に基準点を置くと、写真に基準点が写らないので、演習林保有のクレーンを用いて、林冠部に基準点を配置し、その3次元座標もクレーンのシステムにより得た。撮影した写真について、ディジタル画像化、標定計算の後、ステレオマッチングによる林冠の3次元形状の抽出を試みた。ステレオマッチングは、基本的にはタイ国熱帯湿地林で検証された面積相関法のアルゴリズムを用いたが、相関窓の大きさについては本画像にあったものを選定した。その結果、200m×200mの範囲での林冠の3次元形状を得ることができた。これと併せて、林床、個葉の分光測定を行い、構成要素の分光特性と林冠の3次元形状データとを入力データとして、基本的な植生の放射伝達モデルであるSAILモデルにより、上方への反射係数を算出した。36点でのランドサットETM+データと比較し、定性的な評価をしたところ、おおむね合っていた。合わない要因としては、森林の複雑な形状とそれに伴う反射特性を、SAILモデルの入力パラメータによって表せないことが大きいと考えられる。また、比較的構成要素が少ないアラスカ北方林についても同様な観測、計算を行い。両者のスペクトルの違いについて構成要素の分光特性と構造特性との違いから検討をした。来年度は、定量的な評価、方向性反射特性の評価のために、ステレオ写真から得られた3次元形状と樹木の形状モデルを用いた、モンテカルロ法による放射伝達シミュレータの構築を行う。 (676字)
|