十字科の作物はホウ素要求量が高く、土壌のホウ素供給力が低い場合、ホウ素肥料の施用が必要となる。一方、高濃度のホウ素は植物の生育を阻害し、人体にも害を及ぼす。作物のホウ素要求量を満たすために、多くの場合過剰施肥が行なわれ、それがホウ素の溶出を引き起こし、水系などの環境へ負荷を与えることが懸念されている。昨年は農耕地土壌のホウ素供給力と施肥ホウ素の潜在的溶出特性を検討し、全般的に供試した土壌のホウ素供給力が低いこと、ホウ素含量の低い土壌でも施肥を行った場合、ホウ素が流出し環境に影響を与える可能性があることを示した。 本研究では昨年に続き、作物栽培条件下でのホウ素の挙動を解明するために、グリーンハウス内でポット試験を行なった。供試土壌としては川砂とハウス土壌を、栽培植物にはセロリ(Aoium fraveolens L.var.dulce DC.)を用いた。供試土壌のみの区と供試土壌対バーク堆肥1:1の区を設け、ホウ素肥料(ホウ砂)を0、1(標準)、2(二倍)及び3(三倍)レベルになるように施用した。1週間か10日間隔で流出水を採取し、全ホウ素含量などの項目を測定した。なお、栽培前後の土壌のホウ素含量、セロリのホウ素含量を測定し、土壌-植物-水系でのホウ素の挙動を検討した。 35日の栽培期間中に1.4〜17.4%のホウ素が溶出した。ホウ素の溶出量は砂区で高く、施肥量が高くなるにつれて多くなる傾向を示した。また、ホウ素の溶出量は最初の一、二回の採水で多く認められ、その後は少なくなった。このことから、施肥後最初の一、二回の雨あるいは潅水によってホウ素が溶出しやすいことが分かった。さらに、土壌だけの区よりバーク堆肥を混ぜた区の方がホウ素の溶出量が低く、バーク堆肥など有機物の施用がホウ素の溶出を抑える効果があることが明らかとなった。一方、セロリのホウ素吸収量は添加量の1%以下であった。このように、施肥したホウ素のわずか一部が植物に吸収されるが、その大部分は土壌中に残され、施肥直後には急激に、その後は徐々に溶出し、水系に負荷を与えるものと予想される。
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