研究概要 |
河川水・湖水・沿岸海洋水などに溶存する有機炭素(DOC)の挙動を把握し、循環の法則を探る目的で、樹脂と水酸化鉄を用いた化学分画にHPLCによるゲル浸透クロマトグラフィーを組み合わせ、濃縮・分離操作を行った後、HPLCを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)-フォトダイオードアレイ検出器,蛍光検出器で同定した。岡山県高梁川から抽出された河川水フルボ酸、安曇川河川水フルボ酸、琵琶湖水、播磨灘(瀬戸内)海水をこの手法で分析すると、河川水起源の腐植酸と停滞水で生成した有機物ピークははっきりと分離し、GPCが有機物を起源別に分けることが出来る有用な手法であることがはっきりした。このことを利用して琵琶湖水に溶存する河川起源腐植酸の動態を観測した。 3次元励起蛍光測定の結果、安曇川から抽出された溶存フルボ酸は励起300nm、蛍光425nmに蛍光ピークを有した。この波長を用いてGPCによる河川水起源フルボ酸の分離条件を検討した結果、フルホ酸ま球状タンパクを分子量マーカーとして、分子量約70k〜100k daltonに相当する保持時間に溶出した。GPCクロマトグラムのピーク面積と標準溶液のDOC濃度を用いて検量線を作成し、この検量線を用いて琵琶湖水中の河川起源フルボ酸の占める溶存有機炭素濃度を測定した。採水は2001年5月〜2002年1月に隔月で行った。 琵琶湖水中において河川水起源フルボ酸は0.25〜0.45mgC1^<-1>で季節変動した。鉛直方向の濃度の変化は8月10月に見られた。8月には表層(0~15m)で低濃度(0.27mgC1^<-1>)、中層以深で高濃度(0.37mgC1^<-1>)を示し、10月には表層で高濃度(0.43mgC1^<-1>)、中層以深で約0.37mgC1^<-1>を示した。他の時期は表層から底層までほぼ一定濃度を示した。フルボ酸が付加される要因としては、河川からの流入が考えられ、減少する要因としては光分解が考えられた。湖水のDOC濃度は1.0〜1.80mgC1^<-1>を示し、河川水起源のフルボ酸は湖水中全溶存有機炭素の30%〜40%を占めると考えられる。
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