研究概要 |
本研究で検討した誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)は、近年、多元素・高感度分析法として広く使用されてきた誘導結合プラズマ分析装置((ICP)に、検出器として質量分析装置(MS)を接続した高感度・多元素分析装置である。分析感度は、ppt(10^<-12>)〜ppq(10^<-15>)となり、現段階の金属分析ににおける最も高感度な分析装置である。又、レーザー光の照射により固体試料を瞬時に溶発・気化させるレーザーアブレーション法も近年実用化され、主に、金属材料の分析等に使用されてきた。本研究では、最新のレーザーアブレーション装置と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)とを接続して、主に、大気粉塵中の有害金属の高感度・迅速分析について検討を行った。 レーザーアブレーション法により、大気粉塵試料中の有害金属を効率良くレーザー光で溶発・気化するレーザー光の照射条件について検討を行い、測定対象有害金属としては、大気粉塵の主要発生源の指標となる金属や毒性等を考慮して、Na,Al,K,Ca,V,Mn,Fe,Zn,Pb,Ti,Cr,Co,Ni,Cu,As,Se,Ag,Cd,Sb,Ce,Wを21元素を選択した。その結果、酸分解等の前処理を行う事なく大気粉塵試料中の20〜30元素を数分間で迅速に測定する事ができた。又、レーザーアブレーションを行うアブレーションチェンバーの自動化により、従来では想像できなかった数百と言った多量の大気粉塵試料中の有害金属の分析も簡単に行える。実際に、日本近海の離島の沖縄、利尻、海洋科学技術センター・調査船・"みらい"において、海洋大気中の粉塵を採取し、有害金属の濃度を本法で測定を行った結果、東アジアから有害金属の長距離輸送の実態が明かとなった。 従って、本法は大気粉塵中の有害金属濃度のモニタリングを行う上で極めて有効な方法であると言える。
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