天然水中に高濃度のアルミニウムが溶解すると、水中に棲む魚や藻類に毒性を示すことが懸念されている。酸性化した土壌や湖沼では溶存アルミニウム濃度の上昇とその影響が詳しく研究されているが、中性からアルカリ性である琵琶湖でも、春から夏にかけて表水層の溶存アルミニウム濃度が上昇することがわかってきた。本研究では、溶存アルミニウム濃度上昇の機構解明を目的として、琵琶湖の溶存アルミニウムの形態別分析法を検討した。 孔径0.4μmのフィルターを通過する溶存アルミニウムを、アルミニウムのヒドロキソ錯体(Al_f)、アルミニウムの有機錯体(Al_<org>、アルミニウムのコロイド(Al_<col>)に分画するために、以下の操作を行った。 ルモガリオン法(試水とルモガリオン試薬を反応させたのち、蛍光強度を測定してアルミニウム濃度を求める)で(Al_f+Al_<org>)を定量した。Al_<org>はHPLC法(試水をカチオン交換カラムで分離したのち、ルモガリオン法を応用したポストカラム法で検出する)で定量した。さらに、ICP-MS法で(Al_f+Al_<org>+Al_<col>)を定量した。 2000年8月、11月、及び2001年2月に、琵琶湖北湖Ie-1地点(水深73m)で、水深0mから72mまで深度を変えて12層から採取した湖水を分析した。アルミニウムのコロイドは2月の底層水以外では検出されず、アルミニウムの有機錯体は全く検出されなかった。琵琶湖の表水層で増減する溶存アルミニウムは、アルミニウムのヒドロキソ錯体(Al_f=Al^<3+>+Al(OH)^<2+>+Al(OH)_2^++Al(OH)_3^0+Al(OH)_4^-)あるいは非常に弱い(HPLC法で検出できない)有機錯体であることが示唆された。
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