深地層における放射性核種の移行の促進・遅延に対し、それら元素に対する嫌気性微生物の影響を解明することを目的とし、微生物とアクチノイドの関わりについて溶液化学的な手法を用いて検討した。地下環境で生息し得る嫌気性菌や硫酸還元菌とプルトニウムやネプツニウム等の相互作用を、吸着係数データを基に検討した。共存する自然環境水のpH及び酸化還元電位Ehなどの化学的パラメータは、微生物の活性や放射性核種の酸化状態、溶存状態を左右する重要な要素である。さらに、微生物の寿命、アクチノイドイオンの化学状態が変化するのに要する時間、同イオンが膜上或いは膜内へ取り込まれる時間との相関について調べる実験を行い、核種がどのような時間にどれだけ動くことが出来るかについて評価を試みた。 微生物の発育に適した35℃及び低温の5℃下でプルトニウム収着実験を行った。中性条件では、4時間後の分配係数は共に低い値であった。しかし、5日後には35℃の微生物のみが5℃のそれと比較して10倍以上高い収着能を示すことが分かった。この傾向は、60日後まで持続した。プルトニウムは4価水酸化物及び吸着能のより高い3価の状態を取り得ることから、微生物による3価への還元反応も関与している可能性がある。さらに、高温高圧で滅菌した微生物と低温で休眠状態にした微生物について、その収着能を比較した。両者は酸性から塩基性条件の全pHにわたり、ほぼ同じ収着能を示すことから、微生物膜表面への単純な吸着反応が予想しえた。
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