生体の発生初期に焦点を当て、内分泌撹乱物質によって発現量の変動する遺伝子群を調べ、その遺伝子群のプロファイリングを行うことにより、撹乱物質の作用メカニズムを解明して行こうというのが本研究の目的である。本年度はモデル物質としてエストラジオールを採用し、発生初期の研究に適したアフリカツメガエルの初期胚を使って、発現量の変動する遺伝子を蛍光ディファレンシャル・ディスプレイ法にて調べた。ツメガエル初期胚を四細胞期から継続的に17β-エストラジオール(E2)に曝露させたところ、2μMまでは無処理と違いがなかったが、10μM処理胚では、頭部及び消化管形成に異常が見られ、体前部及び腹部に水腫を形成した。そこで、ステージ32、41の時期の、無処理胚、2μM処理胚、10μM処理胚のRNAを抽出し、それぞれ84組のプライマーペアでバンド・パターンを比較した。そして、違いの見られたバンドの中の一部を無作為に選び、クローン化を試みた。その結果、ステージ41からE2処理によって発現が減少するもの1つ、増加するもの6つが得られた。3つは既知のもの(MARKS、C3、フェリチン)で3つは相同性の高い配列が存在するもの(レクチン、アポリポ蛋白2種)で、完全に未知のものが1つであった。クローン化された遺伝子断片のうち、E2処理によって発現が増加したレクチン様クローンについて、さらに解析を進めた。RACE法により全長cDNA配列を決定したところ、全長に渡ってカブトガニのタキレクチンと相同性が認められ、アフリカツメガエルのペントラキシン(XL-PXN1)やショウジョウバエのセレクチン(Fw)の一部にも相同部分が認められた。現在、ディファレンシャルディスプレイ法に加えて、約1万スポットから成るDNAマイクロアレイ法による解析を試みている。
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