1.セリンアセチル転移酵素遺伝子を高発現するトランスジェニック植物の作出 植物のセリンアセチル転移酵素には複数のアイソザイムが存在し、細胞内の主要なコンパートメント(細胞質、葉緑体、ミトコンドリア)にそれぞれ局在することが明らかになっている。今回、システインによるフィードバック阻害を受けないようにエンジニアリングした改良セリンアセチル転移酵素遺伝子をタバコおよびシロイヌナズナに導入し高発現させた。 2.セリンアセチル転移酵素遺伝子を高発現するトランスジェニックシロイヌナズナの解析 野生型のセリンアセチル転移酵素および改良セリンアセチル転移酵素を細胞質、あるいは葉緑体に局在させたトランスジェニックシロイヌナズナについて、セリンアセチル転移酵素により生合成されるO-アセチルセリンを定量したところ、改良セリンアセチル転移酵素が蓄積したトランスジェニック植物ではO-アセチルセリンの量が野生型シロイヌナズナの数十倍に増加していた。それに伴い、システイン、グルタチオン量も野生型の数倍に増加していた。このことから改良セリンアセチル転移酵素遺伝子を高発現させた植物では硫黄同化能が高まっていると考えられ、含硫黄環境汚染物質や重金属に対する耐性が期待される。 3.システイン合成酵素高発現タバコの二酸化硫黄に対する耐性 ホウレンソウのシステイン合成酵素を細胞質と葉緑体の両方で高蓄積するトランスジェニックタバコについて解析したところ、二酸化硫黄に対して強い耐性を持つことが確認された。これは高い硫黄同化能と、それに伴い増加したグルタチオンによる活性酸素の除去によるもの推測された。
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