嫌気性フタル酸化合物分解微生物は、台湾台南市内の、家庭ゴミを直接埋立てている廃棄物埋立地土壌(深さ1、3m付近の土壌)、PTA(purified tere-phathalate)製造工場からの高濃度フタル酸含有廃水を処理する嫌気性反応槽汚泥、有機性産業廃水を処理する中温(35℃)、及び高温(55℃)嫌気性反応槽汚泥から培養した。嫌気性汚泥を採取したPTA製造工場からは、テレフタル酸が700mg/l、安息香酸が400mg/l、パラトルイル酸が700mg/l含まれた高濃度の廃水が排出されていた。一方、食品加工工場などからの一般的な産業廃水を処理する嫌気性反応槽は、フタル酸に比較的暴露されていない汚泥である。 はじめに、それらのサンプルを植種源として、人工培地に5mMのortho-、iso-、tere-フタル酸を別々に添加した系で集積培養を行った。廃棄物埋立地土壌を植種源とした培養では、深さ1mのサンプルからそれぞれのフタル酸で微生物の増殖が確認された。しかし、これらの嫌気性微生物はその増殖が確認されるのに1ヶ月以上を要する極めて増殖速度が遅い微生物群であった。これら系内のフタル酸分解微生物の分離を様々な手法を用いて試みたが、通常の方法ではそれらを分離することはできなかった。これらに関しては、現在その分離の試みを継続中である。PTA廃水処理汚泥を植種源とした培養では、それぞれのフタル酸で微生物の増殖が確認された。廃棄物埋立地土壌でのケースと同様、全ての系でフタル酸分解に伴いメタンの生成が見られたことから、おそらくこれらの系でもフタル酸分解微生物とメタン生成古細菌との共生系が構築されていると推察された。しかしこれらの顕微鏡観察では、廃棄物埋立地から集積されたものと形態的に異なる微生物が多く観察された。これらの微生物は増殖速度も極めて遅い上、他の微生物との共生で生育しており、その分離は現在までのところ成功していない。
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