研究概要 |
わが国で年間600万トン以上発生している都市ごみ焼却灰(飛灰および焼却残渣)の適正処理と有効利用を促進するために,近年開発されている溶融処理に着目し,その溶融スラグと二次製品の溶出挙動を調査した。溶融処理方式の異なる都市ごみ焼却灰の溶融スラグ28種,そのスラグを用いて作成した二次製品(コンクリートブロック,煉瓦製品,透水性ブロックなど)14種,さらには一般製品として市販されている土木資材(鉄鋼スラグ,コンクリート製品,アスファルト,など)を11種類用意し,溶出試験を行って,環境影響を調査した。 溶出試験は,わが国の公定溶出試験法である環境庁告示第46号に示される試験法に加え,酸性雨や大気中の二酸化炭素の影響を考慮して,二酸化炭素飽和溶液を用いた密閉試験,二酸化炭素を溶媒中に吹き込む炭酸水抽出試験,pH4の硝酸溶液を用いた密閉試験,最大溶出可能量を調べるためのアベイラビリティ試験を行い,Pb,Cd,Cu,Crなどの重金属類,Na,K,Clなどの可溶性塩類の溶出挙動を調べた。 溶融スラグからの重金属の溶出量は処理前の焼却飛灰からの溶出量と比べて2〜3オーダー低下していた。また,試験結果への影響因子として試料の粒径を調整し,<0.5mm,10-20mm,未粉砕の3段階に調整して実験を行って,試料粒径と溶出挙動の関係について検討した。粒径の小さい試料から多くの元素が溶出する例が多かったが,Pbについては,試料粒径の大きい試料から高濃度の溶出が見られる例があった。これは,試料を細かく粉砕するほど,アルカリ成分が多く溶出し,pHが高くなった結果,溶出挙動が異なったものと思われた。このことから,溶出試験時に試料粒径を小さくすることが必ずしも安全側の評価につながらないことが示された。
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