FAOのGFPM(空間均衡分析による世界林産物貿易モデル)を応用したアジア地域の林産物貿易モデルのバージョン2の製作にあたった。今年度のもっとも重要な課題は、丸太供給と天然林劣化の関係をどのようにモデルに組み込むか、ということであった。FAOのGFPMは、丸太供給と森林資源の増減の関係をモデル内に組み込んでおらず、FAOの出した丸太供給量予測を外生的にモデルに組み込んでいるので、林産物の森林資源への影響分析は、説得力に欠けるものとなっている。 とはいえ森林資源のタイムシリーズデータを入手できる国は、先進国に限られているため、FAOがこれまでに森林資源と林産物生産をリンクさせた唯一のモデルである、Global Fiber Modelのデータをもとに、アジア地域の森林資源モデルを構築することにした。Global Fiber Modelでは、森林資源と紙パルプ供給の関係がかなり単純化され、また紙パルプ供給の予測が楽観的になっている。そこで、ワーキングペーパーの熱帯広葉樹の森林資源モデルにインプットされていたデータをもとに、産業用材伐採と森林資源に関する動態的なシミュレーションモデルを構築中である。 また森林の持続可能性と林産物貿易の関係について、国際的枠組みをどのように構築すべきかという政策的な議論も展開した。近年のGATT/WTOの貿易と環境についての議論、林産物自由化への動き、地球サミット以降の森林管理についての多国間環境条約への動き、などをフォローし、他方で、過去15年程度の森林資源と林産物貿易の関係についての研究業績をレビューし、あるべき国際的枠組みの姿について考察した。
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