セラミダーゼは複合糖質代謝系で、糖鎖部分よりもセラミド部分を強く認識するもので、その疎水部分の認識メカニズムは、非常に興味深い。申請者は、今年度この酵素の機能解析用試薬の開発として、種々の光反応性セラミド誘導体の合成を検討した。大量合成(0.5モルスケール)可能なジアジリンのフェノール誘導体から、ハロゲン化脂肪酸メチルエステルを反応させた後、加水分解することで、容易に光反応性脂肪酸誘導体の合成に成功した。この光反応性脂肪酸誘導体をセラミダーゼの逆反応の縮合反応条件に供したところ、サイコシン(リゾガラクトシルセラミド)との酵素的縮合で、光反応性ガラクトシルセラミドを合成することに成功した。この光反応性ガラクトシルセラミドは、抗ガラクトシルセラミド抗体による認識を受け、それは、光反応性基を光反応させた化合物でも有効であった。これにより、合成した光反応性ガラクトシルセラミド誘導体が、標的とするセラミダーゼの基質となることが示唆され、更に光反応性糖脂質誘導体を用いた光アフィニティーラベルにおいて、ラベル部位解析に抗体を利用することが可能となり、機能解析簡便化の道を開いた。 また、セラミドを構成する脂肪酸と長鎖塩基それぞれに有用官能基を導入する手法を有機化学的に検討した。L-セリン誘導体を出発原料とし、Horner-Emmous反応により長鎖塩基末端部分を修飾可能とし、それを修飾脂肪酸誘導体とすることで2価修飾セラミド合成に成功した。この2価修飾セラミドは、異なる蛍光団を導入することで、今まで未知であった細胞内での長鎖塩基と脂肪酸代謝の観察や、光アフィニティービオチン化試薬の合成に適用可能である。
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