研究概要 |
昨年までに、5-チオガラクツロン酸の5位のエピメリ化が非常に早い事が判明した。従って、オリゴチオガラクツロン酸を合成するには、解決しなければならない問題点が複数あることが明かとなった。それらの問題点を解決するモデルとしてオリゴ-5-チオグルコースの合成を計画した。5-チオグルコースは文献に従い調整した。通常の糖化学ではベンジルエーテルが保護基として用いられるが、本目的の場合、分子内の硫黄原子が触媒毒となる事から最終段階で問題となることが予想された。そこでトリフェニルホスフィンによる還元反応で容易に除去可能な2-(azidomethyl)benzoateエステルが有効であることを明らかとした。この保護基は2001年関根らによって報告されたが、申請者も独自に合成法、応用法を開発した。 チオピラノースのグリコシル化は、いくつか報告があるが、収率、選択性等に問題が残っていた。種々検討した結果、2位保護基にベンジル基や、p-メトキシベンジル基を持つドナーは多くのアクセプター良好な収率で且つ高いα選択性でグリコシル化が進行することが解かった。また、p-メトキシベンジルエーテルはDDQ酸化により硫黄原子を損ねることなく脱保護可能である事が判明した。これらを応用して、硫黄置換α-1,6-、及び1,4-グルカンを4量体としての合成を行った。 一方、チオピラノース型のβ選択的グリコシル化反応はこれまで報告が無かった。条件を検討した結果、2位にベンゾイル基或いはピバロイル基を有するドナーは6位が遊離したアクセプターと高選択的にβ付加体を与える事が判明した。この知見を基に5'-チオゲンチオビオシドの合成に成功した。
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