研究概要 |
研究代表者は,新概念によるバンコマイシン耐性克服を試みている。すなわち、生物活性天然有機化合物を適切なリンカー、scaffoldに複数結合した「集積化天然物」によるアプローチである。これまでに数種のバンコマイシン集積体を合成し、耐性菌に対して顕著な活性増強を達成した。耐性菌細胞壁モデルとポリマーとの相互作用を測定し、抗菌活性向上のメカニズムを明らかにするため研究を進めた。 BIACORE社製表面プラズモン共鳴装置(SPR)を用いて検討を行った。グラム陽性細菌の細胞壁生合成中間体末端は、5残基のアミノ酸からなるペンタペプチドである。バンコマイシンが効力を示す通常の細菌では、カルボン酸末端がD-Alanine-Dalanineであるのに対し、耐性菌に於いてはD-Alanine-Dlactateとなっている。そこで、これら特徴的な末端2残基を含むリガンドを合成し表面プラズモン共鳴装置のセンサーチップ上に固定した。ここへ、バンコマイシン、モノマー、ポリマーを流し解離定数KDを求めた。その結果、バンコマシンポリマーは、対応する単量体に比較して解離定数が小さく、耐性菌表面モデルに対しても強い相互作用を示した。 このことは、耐性菌に対する抗菌性向上が薬剤と菌表面との相互作用回復によるものであることを示唆するものである。 本年度得られた成果を基に、構造活性相関研究に展開する予定である。
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