研究概要 |
細胞内における蛋白質の生合成においてDnaJ,DnaK,GroELなどの分子シャペロンは協同的に作用して蛋白質の立体構造形成の補助、立体構造の修復を行う。これを模倣すれば凝集した蛋白質を立体構造を修復し、機能を再生することができる。分子シャペロンの協同的作用を発現するため、脂質二重膜を表面にDnaJ,DnaK,GroELを固定化したデバイスを構築したが、タンパク質修復機能を充分得ることは出来なかった。これは分子シャペロンが協同的に作用しなかった為であり、より効率的な機構を構築するためには個々のシャペロンの物性に対する詳細の研究が必要である。これまでGroELの基質認識機構について詳細な知見が得られているがDnaKに関しては不明の点が多い。そこで本研究ではDnaKの基質結合部位フラグメントを用いてその基質認識機構について調べた。DnaKはN末端のATPase部位とC末端の基質結合部位からなり、前者の活性により後者が構造変化して基質を脱着する。DnaK基質結合部位の遺伝子を大腸菌からクローニングし蛋白質発現用ベクターに組み込み大量発現してフラグメントを作成した。さらに変性タンパク質モデルとしてαラクトアルブミンを還元カルボキシル化し(CMLA)、さらにこれをFTICで蛍光標識した(FITC-CMLA)。C末端フラグメントDnaK386-638は単独でCMLAを結合することをゲルろ過クロマトグラフィーで確認できたが、このフラグメントからC末端へリックスを取り去ったDnaK386-561はCMLAを結合しなかった。このことはC末端のヘリックスが基質結合を安定化することを示しており、さらにその役割の詳細を調べるためにFITC-CM-LAとDnaK386-638の結合を偏光解消法によって解析した。GroELの基質結合部位フラグメントの変性αラクトアルブミンとの結合は室温付近で顕著な温度依存性が見られたが、DnaKの場合は温度依存性は殆どみられなかった。DnaKに関するより詳細な機構解析を次年度行う。
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