研究概要 |
化学的方法と生物学的方法を融合する新規な高純度長鎖ペプチドの合成法の開発を目的として研究を行った.化学的方法と生物学的方法を融合し,発現蛋白質を合成ブロックとして利用できるようになれば,それぞれの利点を組み合わせることにより,その応用範囲が格段に広がると期待できる.本研究では,NMRを用いた構造解析を念頭におき,部分的に安定同位体標識した蛋白質の合成を行うこととした. 1.部分保護C-端ペプチド合成ブロックの合成法の開発 申請者らが開発した長鎖ペプチド合成法,チオエステル法,を適用するために,発現蛋白質をカルボキシ(C)端に相当する合成ブロックへ誘導する方法を開発した.アミノ(N)末端のアミノ酸1残基を,化学的方法により除去できることが報告されている.この方法では,N末端がオキソアシル基となった中間体を経る.この中間体の側鎖アミノ基に保護基を導入した後,オキソアシル基を除去することにより,遺伝子組換法により大腸菌を用いて調製したMax蛋白質の部分ペプチド,Max(22-110)から,部分保護ペプチドセグメント,[Lys(Boc)^<24,34,40,57,66,77,89,104>]-Max(23-110)(1)を合成した. 2.Max蛋白質,リン酸化部分ペプチド(1-110)の合成 リン酸化ペプチドチオエステルセグメント,Boc-[Ser(PO_3H_2)^<2,11>]-Max(1-22)-SCH_2CH_2CO-Leu-OH(2)は,これまで行ってきた合成法により合成した.これらの合成ブロック1と2を銀塩存在下で縮合し,トリフルオロ酢酸により保護基を除去し,[Ser(PO_3H_2)^<2,11>]-Max(1-110)を合成した. 現在,安定同位体で均一に標識した合成ブロック1を調製し,非標識リン酸化ペプチドチオエステルとの縮合により,部分的に標識したリン酸ペプチドを合成中である.
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