大腸菌の分泌蛋白質のほとんどが、Sec因子(現在7種が知られている)により構成される膜透過装置を介して細胞質膜を透過する。これらのSec因子はすべて精製され、精製Sec因子のみから膜透過活性を再構成することができるが、その膜透過活性はもとの反転膜小胞の活性の1/10から1/100という低い活性にすぎない。これらのことから、未知のSec因子の存在が示唆されていた。申請者は、以前、SecGを発見・同定する過程で、膜透過促進活性を持つ7kDaの因子の存在を確認している。今回この新因子の機能を明らかにするために、新因子の精製を行った。精製条件を検討した結果、膜画分をオクチルグルコシドで可溶化し、TCA処理を行い、可溶性画分を得、アセトン濃縮後、DMSO、アセトンで抽出することにより、約70%の純度の7kDa精製標品が得られることが明らかとなった。さらにSDS-PAGEによる精製を行った結果、銀染色で単一のバンドとして新因子が精製できた。この精製新因子はSecAEYから再構成される膜透過の促進活性を保持していた。約500mg(蛋白質として)の膜小胞から約10μgの新因子が得られた。新因子のN末端アミノ酸配列を試みたが、N末端配列は決定できなかった。このことは、新因子のN末端が修飾されていることを強く示唆している。今後は新因子の限定分解産物から部分アミノ酸配列を決定し、新因子の機能解析を進める。
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