大腸菌の分泌蛋白質のほとんどが、Sec因子(現在7種が知られている)により構成される膜透過装置を介して細胞質膜を透過する。これらのSec因子はすべて精製され、精製Sec因子のみから膜透過活性を再構成することができるが、その膜透過活性はもとの反転膜小胞の活性の1/10から1/100という低い活性にすぎない。これらのことから、未知のSec因子の存在が示唆されていた。申請者は、再構成系において膜透過活性を促進する7kDaの因子の存在を確認し、この新因子の精製を行った。前年度は新因子のN末端アミノ酸配列の決定には至らなかったが、今年度はN末端の脱保護処理により5アミノ酸の同定に成功した。データベース検索の結果、得られた配列はRpmJのN末端5アミノ酸に一致した。rpmJ遺伝子はsecY遺伝子の直後に位置するためsecXと呼ばれることもあったが、その後リボゾームと相互作用することが明らかとなりRpmJまたはリボゾーム蛋白質RL36と呼ばれてきた。しかし、RpmJの機能は依然として不明である。 RpmJは38アミノ酸からなる分子量4.4kDaの塩基性蛋白質であり、SDS-PAGE上では約7kDaの位置に出現することが知られている。rpmJ遺伝子をクローン化し、大量発現させた大腸菌からRpmJを精製し、再構成系に導入した結果、野生株から調製した反転膜小胞を用いて精製した新因子と同様な促進活性が認められた。さらに、SecY/Eから再構成したプロテオリポソームに、可溶性因子として精製したRpmJを膜透過反応時に添加しても同様に反応の促進が検出された。これらのことから新因子はRpmJ(SecX)であると結論した。さらに、RpmJは可溶性因子であるが、SecY/Eと相互作用して膜に局在することが強く示唆された。現在、rpmJ遺伝子破壊株を作成し、in vivoにおける解析を進めている。これらの成果に関しては投稿準備中である。
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