研究概要 |
血液凝固系タンパク質のEGF様ドメインのセリン残基にXylα1-3Xylα1-3Glcβ1-O-Serという特徴的なO-配糖体がみられる。今年度は、その生合成に関わるUDP-キシロース:β-グルコシドα1-3キシロシルトランスフェラーゼ(G酵素)の精製と、市販品として手に入らなくなったドナー基質であるUDP-キシロースの合成経路の確立、天然基質である血液凝固系タンパク質中のEGF様ドメインのセリン残基にグルコースのみがβ結合したペプチドの調製を計画した。 ドナー基質UDP-キシロースの合成はUMP-イミダゾール体とキシロース-1-リン酸トリオクチルアンモニウム塩との縮合反応による合成経路を確立し、収率36%で合成した G酵素の精製はウシ肝臓を出発材料とした。遠心分離による膜画分の分画後、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、Sephacryl S-200ゲル濾過クロマトグラフィー、MonoQ陰イオン交換クロマトグラフィー、UDP-ヘキサノールアミンアガロースクロマトグラフィー、の順に展開することで、SDS-PAGE上で単一バンド(48kD)になる精製標品を得た。精製酵素は至適pHは7付近、Mn2+によって活性化され、Cu2+,Fe2+により不活性化された。ドナー基質UDP-キシロースに対するKm値は40μM、アクセプター基質2-[2-ピリジルアミノ]エチルβ-D-グルコピラノシドに対するKm値は530μMであった。現在、G酵素の遺伝子クローニングに向けてアミノ酸配列を解析している。 また、東海大学北條助教授との共同グループにより、天然基質である血液凝固系タンパク質中のEGF様ドメインのセリン残基にグルコースのみがβ結合したペプチドの化学合成を試みている。これまでにグルコースがセリン残基に結合した糖ペプチドの合成、ウシEGF様ドメインに含まれるペプチドセグメントの合成を行った。現在、それら各セグメントのライゲーション反応、および、ジスルフィド結合の条件を検討している。
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