研究概要 |
本研究の目的は、インターフェロン誘導型抗ウイルス機構(2-5Aシステム)の主要酵素であるヒトリボヌクレアーゼL(RNaseL)の立体構造を解明し、抗ウイルス薬の合理的デザインへ役立てることである。ヒトRNaseLは、741アミノ酸残基からなり、N末側がアンキリンリピートドメイン(ANK)、中央部がキナーゼ類似ドメイン、C末側がRNaseドメインというドメイン構成であると言われている。RNaseLは不活性型の単量体として誘導されるが、2-5A(2',5'-結合オリゴアデニル酸)のANKへの結合により2量体化し、活性型となるという仮説が提唱されている。平成12年度は、研究協力者の中西雅之博士、北出幸夫教授(岐阜大・工)より種々の結晶化用サンプルの提供を受け、2-5A存在下で、ANKの結晶を得ることに成功した。兵庫県の大型放射光実験施設SPring-8のBL41XUにおいて、太さ数十μm程度の針状結晶であるにも関わらず、2.2Å分解能までの回折強度データの収集に成功した。 平成13年度は、多波長異常散乱(MAD)法によりANKの位相決定を行うため、ANKのSe-Met置換体の調製およびBr付加2-5Aを用いた結晶化を試みた。Se-Met置換ANKに関しては、微結晶を得ることに成功し、SPring-8のBL40B2において、XAFSデータを収集することができた。しかし、結晶の質が悪く、回折強度データの収集はできなかった。また、NativeのANK結晶をNaBr溶液に浸し、MAD法による位相決定を試みたが、位相決定には至らなかった。従って、本研究で得られた主要な成果は、ANKの結晶化条件を確立したことである。また、RNaseL全長に関しては、結晶化条件の探索中である。
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