研究概要 |
トレオニンアルドラーゼは、ピリドキサールリン酸を補酵素としてトレオニンをグリシンとアセトアルデヒドに分解する反応(アルドラーゼ反応)を触媒する酵素で、トレオニンの2つの光学異性体(_<L->,_<D->体)およびそのメソ体を基質とする基質特異性の異る複数の酵素が報告されている。そのなかで、_<D->トレオニンを基質とするArthrobacter sp.DK-38由来の_<D->トレオニンアルドラーゼ(DTA)は、2価の金属であるマンガンを反応に必須とする。このDTAの光学異性体認識と2価金属による活性制御の機構は非常に興味深く、そこでX線結晶構造解析をおこなうことで明らかにしようと試みた。 まず、大腸菌で大量発現させ精製したDTAを用いて結晶化条件の検索・最適化を試みた。その結果、20mg/mlの蛋白試料溶液を使い0.1M Tris/HCl,0.2M MgCl_2,12%w/v PEG#4000,pH8.0の溶液の条件で基質アナログである20mM S-3-hydroxy-butylate存在させてsitting drop/vapor diffusion法でmacro seedingをおこなうことにより、1.0x0.4x0.2mm^3の透明黄色柱状の結晶を再現良く得ることが出来た。この結晶は、空間群P2_12_12_1で格子定数a=88.3Å,b=129.6Å,c=62.3Å,α=β=γ=90°で非対称単位中に2分子を含んでおり、現在までにこの結晶を用いて2.6Å分解能のデータを得ることが出来ている。続いて位相決定を行なうために、Seleno-methionine置換酵素の作成と重原子誘導体の検索を試みた。Seleno-methionine置換酵素は大腸菌B834株を用いることで行ない、野生型酵素と同様に精製結晶化をおこなった。現在、位相決定に適当な重原子誘導体の検索を進めている。
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