一酸化窒素(NO)センサー蛋白質グアニル酸シクラーゼ(sGC)は、NO結合により活性化され、GTPからcGMPを合成する。本研究では、NOによるsGCの活性化制御機構を、発現系の構築や共鳴ラマン分光法、部位特異的変異体を調製することにより明らかにすることを目的としている。さらに、sGCのX線結晶構造解析も目指す。 本年度は、多量のサンプルを要する共鳴ラマン分光法や、X線結晶構造解析を目指して本蛋白質の結晶化を行うために、申請者は本蛋白質の大量発現系の構築を行った。申請者は、本蛋白質の異なる2種のペプチド鎖がコードされたDNAを発現ベクターに組み込み、大腸菌の培養温度、時間、目的蛋白質誘導物質の添加量または添加する時間を変化させたり、またシャペロニンやチオレドキシンといった蛋白質を共発現させるなど、様々な条件でsGCを発現させた。その結果、チオレドキシンと共発現させた条件で、高いcGMP合成活性を持つ成分が得られた。しかしながら、この活性成分を精製して調べたところ、NOによる活性上昇がなく、分子量も目的のものより小さかった。この結果から申請者は、この活性成分がプロテアーゼによりペプチド鎖が切断されたsGCのcGMP合成部位と予想し、現在アミノ酸配列分析により同定を進めている。 また、NOの結合するsGCのヘム結合部位のみの大腸菌による発現に成功し、精製・結晶化を進めたが、安定で均一な蛋白質を得ることができなかったために、良質な結晶を得ることができなかった。 来年度は、天然のsGCと同じものを大腸菌内で発現させることを目指し研究を進めていくとともに、これまで得られているsGCのヘム結合部位、cGMP合成部位のX線結晶構造解析を目指し、精製法の確立・結晶化を行い、部分的構造からもsGCの活性化制御機構の解明にアプローチしていく。
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