CaMキナーゼIはCaMキナーゼキナーゼによってリン酸化され活性が著しく上昇することが知られているが、カルモデュリン(CaM)以外に活性を制御する因子は報告されていない。カルシウム結合蛋白質の中では、NCS-1がある種のカルモデュリン依存性酵素を活性化するという報告がなされているがCaMキナーゼIに関しての検討はなされていない。今回、我々は新たにニューロカルシン(NC)がCaMキナーゼIの活性を制御する可能性を見い出した。NCはCaMに代表されるカルシウム結合蛋白質に特徴的に見られるEFハンド構造を3つ持つカルシウム結合タンパク質であり、神経細胞に特異的に発現していることが知られている。このNCのCaMキナーゼI活性に与える影響を検討した結果、CaM存在下でNCはCaMキナーゼIβ2の活性を上昇させた。この時NCはCaMと競合せず、過剰量のCaM存在下でも活性化がみられた。これらの現象はCaMキナーゼIの活性化が既知のカルモデュリンとCaMキナーゼキナーゼによるものだけでなく、複数の要因によって制御されている可能性を示すものである。又、CaMキナーゼのターゲット因子の一つとして神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)をとりあげ、リン酸化とその活性制御の関連をin vitro及び細胞内で検討して結果、CaMキナーゼIIによるnNOSのSer847のリン酸化が神経細胞内でのnNOS活性を抑制することが示された。これまでの研究によりCaMキナーぜIに関してもin vitoroの実験系ではnNOSをリン酸化しその活性を押さえることを報告しているので、今後はCaMキナーゼIの細胞内での機能性御機構の解明につなげてゆきたい。
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