同族元素の硫黄とセレンは、鉄硫黄クラスター、チアミン、ビオチン、セレノシステイン残基などの構成元素として生体内で必須の役割を果たす。これらの生合成には、システイン・セレノシステインからの硫黄・セレン脱離が共通の初発反応として含まれ、硫黄・セレンをターゲット分子に転移するタンパク質など種々の因子の関与によって分子構築が実現する。本研究では、初発反応を触媒するシステインデスルフラーゼとセレノシステインリアーゼについて、構造と機能を解析した。 セレノシステインに高い特異性を有する大腸菌CsdBと、基質アナログであるプロパルギルグリシンの複合体の結晶構造を2.8Aの分解能で解析し、プロパルギルグリシンがピリドキサールリン酸とシッフ塩基を介して結合した構造を明らかにした。 大腸菌IscSは、システインからの硫黄脱離を触媒し、鉄硫黄クラスター形成における硫黄供給系として機能する。硫黄原子はIscSのCys328上にペルスルフィドの形で受け取られた後、IscUに転移し、最終的には鉄硫黄クラスターに取り込まれる61scSからIscUへ硫黄が転移する過程では、IscSとIscUが複合体を形成する。この複合体中で、IscSのCys328とIscUのCys63がジスルフィド結合を形成していることを明らかにした。また、IscUがIscsののシステインデスルフラーゼ活性を促進し、この活性化にIscuのcys63が必須であることを見いだした。以上の結果から、ペルスルフィドを形成したIscSのCys328のγ位硫黄をIscUのCys63が攻撃することで基質システイン由来の硫黄がIscSから遊離し、IscUに転移するものと考えられた。
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