研究概要 |
我々のグループは,その蛋白質が安定で立体構造解析や分子機能解析に適した高度好熱菌Thermus thermophilus HB8を材料として,原核生物のヌクレオチド除去修復系酵素群の研究を進めてきた。そして最近,X線結晶解析によりUvrBの立体構造の決定に成功した。その立体構造および他種ホモログとのアミノ酸配列の保存性から推定したUvrA結合ドメイン(βドメイン;154〜242残基目)だけをヒスチジンタグ融合蛋白質として大腸菌で発現させ,精製した。さらに,このUvrB-βと配列類似性を示すtranscription-repair coupling factor(TRCF)のβドメインも同様に発現・精製した。まずネイティブ電気泳動で2つのβドメインとUvrAとの相互作用を調べたところ,相互作用が確認された。次に,表面プラズモン共鳴法によりこの相互作用を定量的に調べたところ,両者とも全長のUvrBと同程度の親和性でUvrAに結合できることが分かった。また,全長のUvrB(実際に用いたのはATP加水分解活性を欠失したUvrBの変異体)は結合に伴ってUvrAのATP加水分解活性を阻害するが,βドメインでは阻害しなかった。そこで,UvrAとUvrBの複合体にβドメインを加えたところ,UvrBによる活性の阻害が抑制された。これらのことから,UvrB(およびTRCF)のβドメインがUvrA結合ドメインであることが強く示唆された。
|