マウスGATA6因子は(A/T)GATA(A/G)配列を特異的に認識する転写調節因子であり、初期発生において心臓及び消化管系に特異的に発現し、これらの組織の発生と分化に必須な役割を果たしている。GATA-6自身の組織特異的な発現およびその調節機構を解明することは、GATA-6の発生・分化における機能を理解する上できわめて重要である。今年度は、この組織特異的な発現を制御しているcis-elementを同定するために、トランスジェニック・マウスの手法を用い、GATA-6遺伝子の翻訳開始点の下流にlacZ reporter geneを融合し、5'上流の領域によって駆動されるlacZ発現をin vivoで調べた。その結果、オリゴキャッピングで決定した転写開始点より上流約5kb、非翻訳ExonlおよびIntron 1領域を含むtransgeneを持つマウスでは、E8.5において、lacZ活性が心臓が形成される領域に検出された。E10.5-13.5においては、心臓のみならず、気管、胃などの組織でGATA-6の特徴的なlacZ発現が観察された。また、成体においても、lacZの心臓特異的な発現が観察された。したがって、上流約5 kbの領域にGATA-6の初期発生期のおける発現及び発現維持に必須なエンハンサー及びプロモータ領域が含まれていることが示された。次に、5'上流領域を約1.3kb及びIntron 1領域を欠損させたところ、lacZの発現が全く検出されなかった。したがって、-5.0kb〜-3.7kbの領域及びintron 1領域にGATA-6の心臓における発現に必須なcis-elementが存在すること示唆している。 さらに、以上の成果から同定されたcis-elementの配列を詳細に解析し、これらの領域に結合しうる分子の探索を進めると同時に、消化管系に特異的発現を制御するエンハンサーあるいはサイレンサー領域の同定を行っている。
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