研究概要 |
本研究では、リポキシゲナーゼ(LOX)の非ヘム鉄リガンドの反応修飾機能を詳細に解析するために、野生型酵素及びその第5鉄リガンド変異体を調製し、反応特性を比較検討することにより、第5鉄リガンドがLOXの反応特性に及ぼす影響を解明することを目的した。モデル酵素として、第5鉄リガンドの位置にSerを有する8LOXを用い、このSerをAsn、His及びAlaで置換した酵素を調製した。先ず、HeLa細胞での小スケールの発現と解析を試みたところ、相対活性は、Ser体>Asn体>>His体、Ala体となった。Ala体が十分な酵素活性を保持していることが判明し、LOX活性の発現に、第5非ヘム鉄リガンドは質的に必要ないことが示唆された(Jisaka et al.,ABB)。各変異酵素の反応特性をより詳細に検討するために、各酵素の大腸菌発現・精製系を確立した。各精製酵素の鉄含量を測定した結果、いずれも相当量の鉄を保持しており、第5鉄リガンドは鉄含量に影響しないことが確認された。Asn体のVmax値は、Ser体と同等であったが、Km値は10%以下に低下していた。一方、His体では、Km値に大差はなかったが、Vmax値はSer体の2倍に増大していた。以上の結果より、第5鉄リガンドにより、酵素反応のKm値及びVmax値が各々独立して影響を受ける可能性が示唆された。また、小スケール実験では低い相対活性であったHis体が、Ser体より大きいVmax値を有したことより、His体は、反応時間及び基質濃度等の反応条件の影響を受けやすいことが示唆された。Hisを持つLOXは、動物LOXの主要なファミリーを成すことから、Hisによる反応修飾機能のより詳細な解析が望まれる。
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