研究概要 |
海産の無脊椎動物であるホヤは、ある種の血球(バナドサイト)の液胞内にバナジウムを高濃度に濃縮している。バナドサイトの液胞はきわめて低いpHに維持されており、バナジウムを高濃度に濃縮している種ほど液胞内のプロトン濃度が高いという関係があることから、バナジウムの濃縮にプロトンの電気化学的エネルギーが共役している可能性が強く示唆される。 本研究は、このエネルギー共役系を明らかにするための第一ステップとして、プロトンの濃縮に働く液胞型プロトンATPase(V-ATPase)の機能解明を行うことを目的として、(1)ホヤのV-ATPaseサブユニットをコードする遺伝子のcDNAを単離した後、(2)得られたcDNAを酵母突然変異体に組み込んで、機能解析を行う。本研究によって、プロトン輸送に携わるホヤのV-ATPaseの高機能のサブユニットの特定をめざすとともに、低pHの液胞を持つ酵母変異体を得ることを目指す。本年度の実績は以下の通りである。 1.スジキレボヤAscidia sydneiensis sameaの血球を採取しmRNAを抽出した。 2.データベース検索によって他種生物のV-ATPaseのサブユニットE〜Hおよびa,cの保存されている領域に対応するPCRプライマーを設計した。 3.既に単離していたホヤのV-ATPaseのサブユニットCの遺伝子を、酵母突然変異体に形質転換した。 4.上記の形質転換体が表現型を回復することを見いだした。
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